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日本書誌学大系「鈴木其一書状」 その2

「夏秋渓流図屏風」・・・の画面感情は、宗達の豊潤、光琳の華麗、抱一の繊艶とおよそ無縁であった。強烈な色彩対比、幻覚のうちに耳鳴りを起こしそうな形態感覚は、其一独自の美的世界である。神経を逆なでするように震える緑苔の輪郭線、諄いほどに加えられた樹皮や岩の点苔、そこに施された墨黒々とした隈なども、琳派の典雅な伝統と隔絶している。

(以上222~223ページより引用)

夏秋渓流図屏風は、署名の書体から、其一40代の後半(1840年代)に描かれたと推定されている。
ということは、1829年に抱一が68歳で亡くなり10年以上の後に描かれた一双であり、喜代姫のバックアップが得られたのと同時期ということになる。

さらに、ここで其一の書状に戻ってみると、本書に収録された書状はその筆跡から其一46歳以降のものであろうと著者北野克によって推測されている。じつは本書の書簡群も夏秋渓流図屏風が描かれた時期だったのである。
書状を見て行くと、3両だ5両だと絵の代金を請求している。ときには石居の提示した金額が低すぎる旨も送っている。これらの代金も其一の個人の収入になったのであろう。
どうりで、琳派の流れから解放されどっぷり独自世界を描くことができたわけである。

ちなみに、本屏風に大量に使われている青・緑の顔料は、当時は(当時も、というべきか)大変に高価だった。
其一の書簡にも岩群青が1斤(600グラム)12両であったと書かれているのだが(秋26)、モノの値段はなかなか比較が難しいのでその辺りの感覚は正確には把握できない。
ただ、日本銀行金融研究所貨幣博物館によれば1両12万円という数字があがっているので、これによるならば15グラムあたり3600円。
現代も、茶色や黒の天然岩絵の具15グラムがおよそ200~400円程度のところ群青だけは3500円していて、其一の書簡とほぼ同じ値段(笑)というのは少しは参考になるかもしれない。
とにかく、そういう超高級な絵の具を大量に使った夏秋渓流図屏風を其一は描くことが出来た。

石居には絵の具が高いことを愚痴ったり、夏の暑い頃には砂糖をもらったり、特に蕪の漬け物はしばしば送られていて其一もこれを大好物としている。
其一のほうも漬け物を一樽を火事見舞いに送ったり、珍しくもないがと谷中生姜なども送ったりしている。

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Comments

其一の群青とフェルメールの青は同じものなのかな?
両方ともラピスラズリから作るんだろうか?

Posted by: 叡 | 2008.11.01 at 10:52 PM

遅レスで恐れ入ります。

其一の青もラピスラズリが主原料のようです。
時代としては江戸の末期ですから、当然安いプルシアンブルーもあったのですが、其一は天然岩絵具を使用していたのですね。

東西の画家が同じような苦労を経験して、数百年を経て我々の眼前に各々の作品が掲げられているのは感慨深いです。

Posted by: あのじ | 2008.11.05 at 07:05 AM

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