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J.D.ヴァンス「ヒルビリー・エレジー」光文社

トランプを支持しているというラストベルトの人々はいったい何を考えているのか、それはアメリカ国内でもわかりにくい部分があって、そこを判りやすく示しているために、本書は多くの人に読まれているらしい。
良くも悪くも頑なな気質、生きるためには助け合わなければならず、そこに必要となる絆を愛情だと認識して彼らはそれを強く守る。生活に密着したプロテスタンティズムと明確な善悪の峻別。

ただ、本書は外側の人々の理解を得るためというより、むしろ当の取り残された人々に向けて書かれている。著者は政策の不合理を指摘しつつも、現状を自らの手で変えるべきで変えることができるのだと主張する。
本書は正しい。

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彼は最低辺に近い家庭で育ち、そこから自分の力でアッパー1%の成功者になった。彼が現状を認容できないものとして変えるべきだと思えば、このような主張にならざるを得ないのは理解できる。
しかし、彼自身も気づいているのだけれど、変えようという意欲でもってこの現状を変えることはできないだろう。
彼がイラクに行って小さな消しゴムを男の子に手渡した体験をしたから、彼がイエール・ローに行ってディナーという名の面接を何度もこなしたから、彼自身が変わり行動が変わって接する世界を変えられる力を得たのであり、自身の体験がなければ変われなかったし変える力も得られなかった。

いや、現状を変える変えないは実はどうでもいいことだ。
われわれは自分の人生とは自分で切り開いて行くものだと、心から信じることができさえすればいいのだ。
けれど、それには自分の身体で学ぶしかない。
自分のボディーは自分だけしか取り廻すことができない、自分で自分の操作をするしかないということは、やってみないと理解できないことだ。
やってみるには、まず一歩、踏み出してみること、それしかない。
彼は職業作家ではないから、自分の家族や自身の体験を離れると筆が鈍る。

彼が言いたかったことは、自分の体験や具体的な問題解決方法ではなくて、抽象的な上記のようなことであったのではないだろうかと想像する。

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