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ベルンハルト・シュリンク「階段を下りる女」

先日、ドイツ人にドイツ語の小説は最近はほとんどないと聞いて、気になってパトリック・ジュースキント「香水」を再読した。
これはフランスを舞台にした話なので、日本語で読んでいるかぎり原典がドイツ語とか著者がドイツ人というのは全く意識されない。
その後、たまたま書評で標記小説を知って、そういえばドイツ人としてはこの「朗読者」の著者がいたではないかと、新作を読んでみた。
本書は主な登場人物はドイツ人で、ただ話の後半はオーストラリアが舞台になる。
書評にあるような、老いることとか死を間近にすることとか、そういう部分で何かを感じさせるところはなくて、軽いミステリータッチの心の底に響いてくるもののない小説だった。
そう、朗読者もそうだったけれど、ドイツの歴史を描くだけで陰影のある小説が書けてしまうわけで、それ以上の著者の洞察力は感じられない。
ただ、この小説を読んでよかったのは、ゲルハルト・リヒターのエマの力を改めて感じられたことだった。
原注として、本書はリヒターの画から何らかのインスピレーションを得た趣旨が記されている。
リヒターの来歴は知らないが、その画はなにか観る者の記憶に訴える力を持っている。逆に、シュリンクの本書に固有の力を感じることができないのは、本書が丸っとリヒターのエマの訴求力を借りている、エマがなければ本書は独自にはストーリーが成立しなかったように思われるからだ。
リヒター、ね。

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