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オーウェン・ジョーンズ「チャヴ」

オーウェン・ジョーンズのCHAVSの翻訳が出た(2017年7月)ので読んだ。
チャヴは2000年ごろから使われている言葉で、ざっくりJ.D.ヴァンス「ヒルビリー・エレジー」のヒルビリー、日本でいえばヤンキーとかに対応するだろうか。
2013年にイギリスで出てすぐに話題になっていた本書はどうにも難しくて読めなかった記憶があって、しかし日本語になっても難しかった。イギリス社会やEUの現状、英語のニュアンスが判らないと意味内容が理解できない。
とはいえ読めば一通りの情報を与えてくれるのは確かで、初めの方の2007年マデリーン事件と2008年シャノン事件の比較など、かなり詳細で判りやすい事例だった。
両事件とも女児の失踪事件で、結論としては、マデリーンはいまなお見つかっておらず(今年は10年の節目だった)、シャノンは見つかり、知人によって報奨金目当てで監禁されていたことが判明する。
ジョーンズが比較しているのは両事件の報道のされ方や社会での受け止められ方で、マデリーンは中産階級(上流ではないという意味で教育と経済的な余裕がある)でシャノンはいわゆるチャヴともいえる公営住宅に住む子供だったのだか、マデリーン事件のほうが初動から多くの(本文中には具体的な数字等が記載されている)被害者に同情的な報道がなされ、たいしてシャノン事件についてはそもそもマデリーンほど報道されなかったのが、のちには犯人のみならず抽象的な公営住宅に住むような人々一般への憎悪ともいえる表現がなされてゆく。
顛末は理解できるのだが、そもそも両事件の報道をリアルに見ていないとこれらの比較分析を読んでも深い納得を得ることができず、・・・そういう意味で本書の理解は難しい。
このほか、1989年のヒルズボロの悲劇(サッカー場で100人ぐらいの観客が圧死等した)なども外電として目にしているだけだとその社会的意味が判らないので、本書で読んでもどこか隔靴掻痒感が残る。
本書は要は製造業がイギリスから失われて、雇用が失われて、固定的な貧困が生じ、そこに政府の適切な施策がなく自助では克服できない段階にあることを述べている。加えて、サッチャリズムが人々のマインドにも影響を与えていて(これはダニーボイルの初監督作「シャローグレイブ」(1994)でも描かれていた)、そのような貧困や階級格差を解消することへの無関心、もしくは憎悪があるのだと。
「ヒルビリー・エレジー」や「ボブという名のストリートキャット」のように克服をしてしまった側の人の話、ではなく、社会問題に一歩踏み込み問題を共有しようして記述されているので読後に閉塞感というか重い感覚が残る。
のだが、私は著者のオーウェン・ジョーンズという人が良く判っていなくて、学生のような風体でいかにもオックスブリッジなんだろうなあという態度のお兄さんが本書の冒頭、チャヴという言葉をなんの頓着なく使う同僚たちに疎外感を感じているのだが、彼がこのような疎外感を得てこんな執念深い分厚い本を書くというのが面白いな頼もしいなと思った。
ダニエル・ピンクが執念深いことが大切ですよというスピーチをしていたのを読んだばかりだったからかもしれないけれど、そう、タフな精神こそが必要なのだ。

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