« マイケル・ルイス「ネクスト」 | トップページ | 「ユダヤ人を命がけで救った人びと」河出書房新社 »

ジョン・ウィック:パラベラム…良い

キアヌ君の映画、見てきた。
実は全然ストーリーを知らず、どうやらガンファイトものだというぐらいしか知らずに見に行った。
最初の15分ぐらいで、激しく後悔した。あまりに人が死んでゆく、グロい。
しかし、友人を誘われてきた都合上、ひとり席を離れるわけにもいかず、目を伏せたりしつつ、まあとりあえず見ていた。
そうそう、肝心のキアヌ君は画面にはもちろん映っているけど、あんまりカッコよくないです、子汚い。

しかし、そのうちどんどん引き込まれていった。
麻薬とかそういうのは全然やったことないけど、ま、そういう不思議なケミカルな反応で引き込まれていった。

一番メインのバトルのはじまり、建物の中なのだけど、そこで流れたのがなんとまあビバルディだった。
しかもオーソドックスな弦楽器の、アレンジしていないものが1楽章流れた。
いやもうまさにトリップした感じだった。
クラシックを映画で使うのは結構難しい。2001年ぐらいのハイエンドなスピリットでないと音楽が浮いてしまう。なのに、あそこでは本当に自然に、バロックが画面に溶け込むように流れていた。クラシック音楽に違和感を抱かせない程度に映画の精神性が堅牢という証左であるとともに、あの瞬間、ビバルディはまさに生きてそこにいた。ああなんて素晴らしい。

さて、映画自体は完全に続編アリという、マトリックスと全く同じテイストで終わる。
ここに至ってすでにストーリーは論外で、途中でいつのまにか犬が生き返ろうが、日本語が死ぬほど不自然であろうが、もうそれらの不条理のてんこ盛りはどうでもいい、ああキアヌ君の映画を1本見ちゃったわあ、という確かな手ごたえを感じつつエンドロールを眺めていると、わずかな時間、例のビバルディの電子的にアレンジされたバージョンが流れる。
もしかすると、これを本編で使う予定だったのをやめたのかな、などと考えてその英断をも勝手に賞賛したり。

劇場が明るくなって、ふらふらと洗面にたどり着くと、同じ回を見終わった観客の会話が聞こえてくる。
それはこれまでないぐらいに、個々人がポジティブなエネルギーを発散させていて、単に饒舌とかいうのではない、何か明るい未来を予感させてくれるエネルギーを拡散していたよ。

この映画は、アメリカで非常に興行収入が良くて、それもR指定がついているにも拘わらず、ということで、その理由が知りたかったのだけど、よーくわかったわ。
エンターテイメントの部分をきちんと保持しつつ、旧約聖書的圧倒的な生命プラス自由への希求が、それこそ暴力的に繰り広げられる。
映画の始まりから周りはすべて敵で、約因だけが拠りどころ。後半、consequencesという単語がキーワードのように呟かれるのも(たぶんsがついていた)、東洋的なのではなくて旧約の世界なのだろう。この映画、当初、真田広之がラスボス役だったそうだが、もし彼が演じていたら、もっと明確に深く描かれただろうにと思う。
ハリウッド的お約束のジェンダーとか若さの美徳とかも吹き飛ばして、単に生命という一点で戦うというシンプルさが普通の人であるところの我々を感動させるのは、最高に素晴らしい(バレエの練習をしていた少女たちはどういう人生を歩むのだろう)。

さて、本タイトルのパラベラムの意味は右記に詳しい。http://imi-nani.fenecilla.com/john-wick_parabellum/
要は、If you seek peace, prepare for war の意味のラテン語由来とのこと。
また、ビバルディは女性孤児にバイオリンを教えるということもしていて、その辺もこの映画と通底しているのかもしれない。

 

 

« マイケル・ルイス「ネクスト」 | トップページ | 「ユダヤ人を命がけで救った人びと」河出書房新社 »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« マイケル・ルイス「ネクスト」 | トップページ | 「ユダヤ人を命がけで救った人びと」河出書房新社 »

2020年3月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        
無料ブログはココログ