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リア王

シェイクスピアの中で一番好き。
リアは愚か、でも、コーデリアの頑なさは理解できず彼女もまた愚かなのでは、と考えていた。
いま、自身の親の認知能力が徐々に低下してきて、リア王がリアルに感じられ、処し方の支えにもなっている。
私は親より先に逝く気はないので。

母はすでに長谷川式スケールは零点、家族も自分自身もわからなくて、霧の中にいる感じらしい。
表向きの体裁を整えるなどの複雑な精神活動はできず、なんとか現実に向き合おうともがくように生きている。
つらい側面があることは見て取れるけれど、常に素で生と向き合う母を私は好ましいと感じる。

父はアルツハイマー型で、長谷川式スケールの点数を少しは取れる。
リア王のように、大言壮語というか美辞麗句というかご立派な文句が得意で、彼の精神は大海原にたゆとうばかりだけれど、本人は認知機能の低下を感じていない。
優しい言葉を掛けるだけの人に現金を渡し、身の回りの世話をする人には冷淡。まさにリア。
疲弊させられはするものの、シェークスピア劇を特等席で見せられて、もう面白くて仕方がない。
ただ「リア王」を読んでいなかったら、現実にただ打ちのめされるだけで、コーデリアのように袋小路に陥っていたかもしれない。
いやほんとに、コーデリアは「リア王」を読んでいなかったのだから、さぞかし大変だったろう。頑なになるのもやむを得ない。

「リア王」は老いを扱っているわけではないと感じる。
老いていなくても愚かな人は多く、愚かなことがいかに愚かか、愚かさに知性は太刀打ちできない。

 

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コメント

ごんふくさん、こんにちは!
おやさしいコメント嬉しいです。
おおよそ同世代だとそういう話が出ますよね。
お話したり聞いてもらえるだけでも、とっても前向きになれます。

母も性格が豹変した時期があったのですが、
ドクターも薬が合わなかった、という表現をしているので、、あれは薬の副作用だったと今は考えています。
あのときは、ちょっと素人では無理なレベルになるというのがよくわかり、逆に公的サービスを利用する良い機会になりました。
専門家も「私たちも命がけのところがある」とおっしゃっていたので、もう地域全体で対応するしかないのでしょう。
地域社会って大切なんですね。

叡さん
こんにちは、
コメント有難うございます。

認知症発症率は女性が多い、というのは聞いていましたが、女性ホルモンというのは知りませんでした。
さまざまな原因が解明されて、集約されてきっと治療に役立つのだと思います。
そういう動きがある、というだけでも希望になり嬉しいことですね。

昨今、同世代の友人と会うと、親の介護の話になります。
Akiko様のご両親も認知症で、いろいろとご苦労がおありかと思います。
友人のひとりはお父様は大学教授だったのに、退官後、認知症となり、しかも徘徊行動を起こして、とても苦労してました。
別の友人は、お母様が認知症になったあと性格が豹変し、「何度母を殺そうと思ったかわからない」と、お母様の死後、わたしに打ち明けてくれました。
どうぞAkiko様も、ご自身が体を壊されぬよう、公的な支援を最大限活用されてください。

お医者様のブログで女性ホルモンが神経細胞に作用するそうです。認知症発症率は女性が多い、男性よりも寿命が長いという事実とは無縁では無いのだそうです。

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