ヘッセ「シッダールタ」
たまたま買っていた「シッダールタ」を開いたら、読みやすかったので、
ゆっくりじっくりこれを読んだ。
てっきり仏陀の話かと思って読んでいったら、途中からおかしなことになってきて、そうではないのかと知った。
ヘッセの作ったお話として読むべきなのだった。
ヘッセはドイツ語の人でノーベル賞を取っている、というぐらいしか知識がなかった。
ノーベル賞はやっぱりすごいよな、と最近は改めて認識しているところがあって、本作もさすがノーベル賞作家と感じさせられた。
まずストーリーが巧み。
言語で、無限・無常・時間は存在しない、ということを表現するとこうなる、というのが具現化しているのであったよ。
イメージとしては、ブラックホールにらせんを描きながら取り込まれながらホワイトホールに放出されながら、という状況で「自分の背中が見える」みたいな??
これがリズムのあるたゆとう文章でできている。ただ、文章自体は日本語で読んでいるので、ヘッセではなく高橋健二の作品かな。
めっぽう厳しい内容を、さらりと易しく書いているので、それこそ川の流れに耳を傾けるように自然に流れ込んでくる。
私としては、本作に顕れる旧約聖書の認識に興味深さを感じたけど、
「愛」の概念をシッダールタが定義しようとしなかったのは、キリスト教世界に生まれついた作者の盲点なのだろうか。
本作は、ヘッセがナチスを知る前の作であり、その後、ヘッセの宗教的側面が変化したのかは知らない。
ただ、私が思うには本書はキリスト教的な考え方の一つの到達点のように感じる。
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